§ 01 / Evaluation

セントジョーンズワート

St. John's Wort

Hypericum perforatum

一言結論

うつ症状で研究されるハーブですが、薬物代謝酵素やP糖タンパク質への影響が大きく、服薬中は相互作用を先に確認する成分です。

主に研究されている領域
気分・抑うつ
比較的根拠を確認しやすい領域
気分・抑うつ 根拠 C
まだ判断が難しい領域
長期安全性・対象集団・製品形態の差
特に注意が必要な人
抗うつ薬・セロトニンに関わる薬、経口避妊薬・ホルモン製剤、免疫抑制薬・移植後の薬

最終更新

A〜Eは効果領域ごとの根拠で、摂取推奨ではありません

§ 01.5 / First Check

安全性と根拠の確認

上限量、相互作用、参考資料を先に確認できます。服薬中は 薬との飲み合わせの確認点 も参照し、個別判断は医師・薬剤師等へ確認してください。

上限量・過剰摂取
未設定 NCCIHは、セントジョーンズワートが多数の医薬品と相互作用し、薬の効果を弱めたり重い副作用につながる場合があると説明しています。
主要参考資料
8件
§ 02 / Evidence

効果領域別の評価

効果領域別エビデンス評価
グレード 効果領域 文献数
C 気分・抑うつ 軽症から中等症の大うつ病を対象にしたシステマティックレビューがありますが、製剤差、重症度、研究期間、併用薬の扱いが限られるため、医療判断の代替にはしません。 2 refs
§ 03 / Profile

体内動態・基本情報

セントジョーンズワートは、ヒペリシン類、ヒペルフォリン、フラボノイドなどを含む植物抽出物です。ヒペルフォリン量や抽出条件で製品差が大きく、CYP3A4、CYP2C9、P糖タンパク質など薬物代謝・輸送に関わる経路への影響が主要な注意点になります。

§ 04

摂取量の目安

個人差があり、上記はあくまで参考値です。医師・薬剤師にご相談ください。

摂取タイミング
研究では標準化エキスが数週間から12週間程度扱われますが、これは摂取目標量ではありません。服薬中、妊娠中・授乳中、精神疾患で治療中の場合は自己判断で使わない前提で読みます。
主な形態
  • 標準化セントジョーンズワートエキス
  • Hypericum perforatum抽出物
  • 乾燥ハーブ・カプセル・錠剤
  • ハーブティーや複数成分配合製品
§ 05 / Overview

解説

研究で扱われた条件、読み取れる範囲、注意点を補足する本文です。摂取推奨ではなく、必要に応じて 摂取量の目安注意点参考文献 と合わせて確認してください。

まず確認したいこと

セントジョーンズワートは、Hypericum perforatum の花や葉に由来するハーブです。うつ症状を対象にした研究はありますが、SuppLabでは「気分対策として試す成分」ではなく、「研究条件と薬物相互作用を先に読むハーブ」として扱います。

特に重要なのは、薬との関係です。NCCIHのセントジョーンズワート資料は、抗うつ薬、経口避妊薬、免疫抑制薬、抗てんかん薬、心臓関連薬、HIV治療薬、抗がん薬、ワルファリン、スタチンなどとの相互作用を挙げています。服薬中の人は、ハーブ由来かどうかではなく、薬の作用や血中濃度に触れる可能性を先に見てください。

うつ症状の研究はどこまで読めるか

Cochraneレビューでは、大うつ病を対象にしたセントジョーンズワート研究が整理されています。2016年のシステマティックレビュー・メタ分析でも、成人の大うつ病を対象に、プラセボや標準的な抗うつ薬との比較が扱われています。

ただし、読める範囲は限られます。研究の中心は単剤使用で、軽症から中等症の大うつ病を含む試験が多く、重症例、長期使用、他の治療との併用、製品差を十分に判断できるわけではありません。気分の落ち込み、眠れない、強い不安、希死念慮がある場合に、医療相談を先送りする根拠にはなりません。

製品差と薬物代謝を分けて読む

セントジョーンズワートの市販品は、ヒペリシン類やヒペルフォリンの含有量、抽出部位、配合成分がそろっていません。研究で使われた標準化エキスの条件を、ハーブティー、乾燥粉末、複数成分配合製品へそのまま広げると読み違えます。

薬物相互作用では、CYP3A4などの代謝酵素とP糖タンパク質が中心になります。JAMAの臨床研究では、セントジョーンズワートの使用後にCYP3A4活性の誘導が扱われています。Lancetの報告では、HIVプロテアーゼ阻害薬インジナビルの曝露低下が示されています。こうした研究は「薬と同じ時間を避ければよい」という単純な話ではなく、薬の血中濃度そのものが変わる可能性として読みます。

注意したい薬・状況

確認する対象なぜ先に見るか自己判断しない場面
抗うつ薬・セロトニンに関わる薬セロトニン関連の副作用が重なる可能性がありますSSRI/SNRI、MAO阻害薬、トリプタン、トラマドールなどを使う
経口避妊薬・ホルモン製剤ホルモン薬の薬物動態や不正出血への影響が研究されています避妊、月経管理、ホルモン治療に関わる
免疫抑制薬・移植後の薬血中濃度の変化が拒絶反応などにつながる可能性がありますシクロスポリン、タクロリムスなどを使う
HIV治療薬・抗てんかん薬・抗凝固薬薬効低下や検査値管理の乱れが問題になりますインジナビル、ネビラピン、フェニトイン、ワルファリンなどを使う
妊娠中・授乳中・未成年一般成人の短期研究をそのまま当てはめにくい領域です妊娠可能性がある、授乳中、子どもに使う

この表は併用可否を判定するものではありません。医師・薬剤師に相談する前に、製品名、成分量、使用期間、服薬名、症状、検査値を整理するための入口です。

肝機能よりも相互作用が中心になる

LiverToxのセントジョーンズワート資料は、臨床的に明らかな急性肝障害との直接的な関連は強くない一方、薬物相互作用によって他の薬の肝毒性や薬効に影響し得ると整理しています。つまり、このハーブを読むときの中心は「肝臓に悪いか」だけではありません。

ハーブ製品全般の肝機能リスクは、成分ごとにかなり違います。アシュワガンダや緑茶抽出物のように肝障害報告が中心になる成分もあれば、セントジョーンズワートのように薬物代謝・輸送への影響を先に見る成分もあります。ひとまとめに「ハーブは肝臓に悪い」「天然だから問題ない」と読まないでください。

SuppLabでの扱い

セントジョーンズワートは、気分・抑うつ領域で研究を整理します。ただし、グレードは摂取推奨ではなく、特定アウトカムに対する根拠の強さを示すものです。評価の読み方は評価方法で説明しています。

薬との確認手順は、サプリと薬の飲み合わせで確認すべきことで整理しています。ハーブ全般の安全性を見る場合は、ハーブ系サプリで肝機能に注意すべき理由も併せて確認してください。比較ページでは、サプリを順位づけるのではなく、根拠領域と注意点を横断して確認できます。

このページは診断、治療、予防、服薬変更、個別の摂取判断を目的としません。服薬中、妊娠中・授乳中、未成年、精神疾患で治療中、手術予定がある場合は、製品を使う前に医療者へ確認してください。

§ 06

注意点・相互作用

相互作用

抗うつ薬・セロトニンに関わる薬 要注意

SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬、MAO阻害薬、トリプタン、トラマドールなどと重なると、セロトニン関連の副作用が問題になる可能性があります。治療中の気分症状を自己判断で置き換えないでください。

経口避妊薬・ホルモン製剤 要注意

臨床研究ではホルモン薬の薬物動態や不正出血への影響が扱われています。避妊、月経管理、ホルモン治療に関わる場合は、製品名を薬剤師または医師に伝えて確認してください。

免疫抑制薬・移植後の薬 要注意

シクロスポリンやタクロリムスなど、血中濃度管理が重要な薬では、薬の効き方が変わると結果が大きくなります。移植後や免疫抑制薬使用中は自己判断で使わないでください。

HIV治療薬・抗てんかん薬・抗凝固薬・心血管薬 要注意

インジナビル、ネビラピン、フェニトイン、カルバマゼピン、ワルファリン、ジゴキシン、シンバスタチンなどで相互作用が問題になります。薬の種類ごとに薬剤師へ確認してください。

手術・歯科処置・複数サプリの併用 注意

麻酔、出血、血圧、薬物代謝への影響を見落とさないため、予定処置の前にはサプリ名、使用期間、製品ラベルを医療者へ共有してください。

注意事項

  • うつ症状、強い不安、希死念慮、双極性障害の既往がある場合は、ハーブ製品で様子を見る前に医療機関で相談してください。
  • 服薬中は、薬の血中濃度や作用に影響する可能性があるため、購入前に医師または薬剤師へ製品名を伝えて確認してください。
  • 妊娠中は避け、授乳中も乳児の眠気や疝痛などが報告されているため、自己判断で使用しないでください。
  • 日光への反応、胃腸症状、めまい、眠れない、落ち着かない、皮膚のピリピリ感などが出る場合があります。
  • 製品差が大きく、同じ植物名でもヒペルフォリン量、抽出物、配合成分が異なります。研究条件をすべての市販品に広げないでください。
§ 07

よくある誤解

セントジョーンズワートについて「セントジョーンズワートは天然の抗うつ薬として使える」と言えるか?

うつ症状を扱う研究はありますが、診断、治療、処方薬の代替にはしません。症状の重さ、併用薬、双極性障害の既往を先に確認します。

セントジョーンズワートについて「薬を飲んでいなければ特に確認はいらない」と言えるか?

服薬がなくても、妊娠・授乳、精神疾患の既往、手術予定、日光への反応、製品差を確認します。特に服薬が始まる・変わる場面では再確認が必要です。

セントジョーンズワートについて「眠れない・不安にも幅広く使える」と言えるか?

NCCIHは、うつ以外の用途では研究量が少なく、明確に役立つとは読みにくいと整理しています。睡眠や不安を単独で判断するページではありません。

§ References

参考文献

  1. システマティックレビュー

    St John's wort for major depression.

    The Cochrane Database of Systematic Reviews 2008 PMID: 18843608 DOI: 10.1002/14651858.CD000448.pub3
    PubMed URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18843608/
  2. メタアナリシス

    A systematic review of St. John's wort for major depressive disorder.

    PubMed URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27589952/
  3. システマティックレビュー

    St John's wort (Hypericum perforatum): drug interactions and clinical outcomes.

    British Journal of Clinical Pharmacology 2002 PMID: 12392581 DOI: 10.1046/j.1365-2125.2002.01683.x
    PubMed URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12392581/
  4. その他

    Effect of St John's wort on drug metabolism by induction of cytochrome P450 3A4 enzyme.

    PubMed URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/13129991/
  5. ランダム化比較試験

    Indinavir concentrations and St John's wort.

    PubMed URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10683007/
  6. ランダム化比較試験

    The interaction between St John's wort and an oral contraceptive.

    Clinical Pharmacology and Therapeutics 2003 PMID: 14663455 DOI: 10.1016/j.clpt.2003.08.009
    PubMed URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14663455/
  7. ランダム化比較試験

    Interaction of St. John's Wort with oral contraceptives: effects on the pharmacokinetics of norethindrone and ethinyl estradiol, ovarian activity and breakthrough bleeding.

    PubMed URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15914127/
  8. その他

    Acute heart transplant rejection due to Saint John's wort.

    PubMed URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10683008/
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